障害者を「弱者」と呼ばないアメリカ人たちの理由は?

障害者が「弱者」と呼ばないアメリカ人たちの理由は?

日本とアメリカの考えの違いを学びましょう_

近年では障害者への暴力や殺害などの事件がクローズアップされる機会が増え、メディアたちもは「弱者には思いやりを!」や「弱者を差別しない社会づくりを!」と呼びかける頻度が増えてきました。しかし、言うは易く行うは難しとはまさにこの事で、障害者の置かれている環境が変わる兆しは一向に見えてきていません。むしろ、障害者たちから聞こえてくるのは「悪くなっている。」ということです。実際に、共同通信社が全国の知的障害者の家族を対象にしたアンケートを実施し、次第に障害者を取り巻く環境が悪化していると答えた人が7割以上に上りました。同じような差別はあるものの、日本よりもこの問題に対して先進国であるアメリカに住む人々は、障害者に対してどのような考え方をしているのかをここでは紹介させて頂きます。

まず初めにお伝えしたいのは、英語では「障害者 “disabled people” 」とは表現せずに、「障害を持つ人=障害と共に生きる人 “people with disabilities”」という表現するのです。
子供の場合も紹介します。「障害児 “disabled children” 」とは表現せず、「特別なニーズのある子供 “children with special needs”」と呼ぶのが一般的なのです。
障害に焦点をあてるのでは無く、あくまでも「人」に焦点をあて、私たちには人間として同じ権利があることを強調する。
そして、アメリカで暮らす人々は、これらのことを子供の頃から自然に学んでいきます。

障害を持つ人[Ja]=障害と共に生きる人[US]

Inclusive Education

「Inclusive Education」と言って、障がい児も健常児 “typical children” も同じ学校に通うシステムがあります。
このシステムが作られた背景には、障害のあるすべての子供達が、健常児と同じように学べる「環境」を提供することは、公立学校の義務であると法律で定められているのです。
また、このシステムは教育内だけに適応されるわけではありません。
同じ考え方が、交通機関や、雇用や住居、その他ありとあらゆる機会で均等になるように法で守られており、世間一般では当然のことだと認識されています。

バルネラブル “vulnerable” の意味

ある一定の環境下で「弱い立場の人」

このような社会では、障害や病気のある人を「弱者」とは表現しません。
もし、障害のある彼らを “weak people(弱者)”などと表現したら、アメリカに暮らす人々は間違いなく「差別だ」と言うでしょう。
もし、障害者が「社会的弱者」だとしたら、それは障害者ではなく、社会が変わる必要性があると考えるのです。
英語では、「弱者」と言う表現の代わりに「バルネラブルな人たち “people who are vulnerable” 」という表現をします。

バルネラブル "vulnerable" の意味

この表現方法は日本語には存在しない表現で、「弱者」とも意味が異なります。バルネラブルは、障害の有無に関わらず誰もでも経験する可能性があることなのです。
例えば、言葉の通じない国に行ったとき、暗い夜道を一人で歩いているとき、風邪にかかったときなどには、バルネラブルな状態になり得る。
人によってバルネラブルの状態というのは異なりますが、例えばアメリカに留学した時のことを想像してください。
英語が伝わらない状態で大学に通いはじめたとしたら、事務手続き、買い物、授業など、すべてのことにおいて助けが必要ですね。どのように大学の授業を取ればいいのか、そもそも宿題は何なのか、どうやってバスに乗って交通費を支払えばいいのかなどです。
日本でずっと暮らしている方々にとっては、想像すら難しいため「バルネラブルの状態」というのは上記よりイメージしやすいのではないでしょうか?

バルネラブル “vulnerable” を理解した後の行動原理

vulnerable を理解すれば行動原理も変わるはず!

「弱者」という言葉は、無意識のうちに「彼ら」と「私たち」を区別してしまう言葉ですが、「バルネラブル」は、人間誰もが経験する苦しみや悲しみを通じて、私たちをつなぐ言葉なのです。
人はだれしも「障害者」や「弱者」とそうでない人たちを、白黒で分けることはできません。
現時点であなたが健康だったとしても、病気や事故でいつ障害をもつか分かりません、またすべての死は万人に訪れます。
そして死期が近づいているとき、私たちは人生で最もバルネラブルな状態にあると言えるでしょう。
どんなにお金や学歴があって、どんなに格好良くても、どんなに美人でも、死ぬときは平等にバルネラブルなのです。
ある日、突然死でもしない限り、いつかは確実に誰かの支えや助けが必要になる瞬間が来ます。その時を想像して考えて見て下さい。

バルネラブル "vulnerable" の意味

バルネラブルになったその瞬間にみなさんは何を求めるでしょうか?
弱者に振り分けられ、周囲から「かわいそうな人」と思われたいですか?
どうせ死ぬんだし、生きてても死んでも同じでしょって思われたいですか?
おそらくバルネラブルになったあなたは、意識さえしっかりしていたら、体は弱っても人として本質は何も変わっていないはずです。
そのため、今の自分を認めて欲しい、気持ちを理解して欲しい思うはずなのです。

まとめ

アメリカの文化の一つですが、重要な考え方です。

「認めて欲しい」「感じて欲しい」「話をしてほしい」「見て欲しい」と思う瞬間は、いつかはだれにでも平等に訪れます。ただ単にそのタイミングが「今」なのか「未来」なのかの違いだけなのです。

アメリカ在住 QQQ先生による執筆
米国大学に4年間留学し、現在は研究職に就いているQQQ先生の執筆記事です。大学では航空工学専攻して理系全般のことをすべて英語で学んだ経験から、学術英語などに造詣の深い方です。趣味は筋トレで「大学時代に筋トレを始めて5年以上継続中。週に5日は最低行きます。」という筋トレ好きでもあります。
アメリカ在住 QQQ先生による執筆

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