批判的語用論の枠組みを考察し、上記の問題の解決を試みる。この領域は言語コミュニケーションに内在する権力性について検討している。
結果
「第3者目線こそが成長へのカギ」
研究の土台となる社会的状況を踏まえ、研究を物語(narrative)として記録し、それを鑑賞する読者こそ上下関係や支配関係から最も自由になれる存在だということが判明した。
考察
「授業を物語化させることにより多くの視点から指摘を受けれる」
権力志向の社会では、権力は談話言説である。これは、我々読者が権力を持つ状況でテクストを形成するのか、権力なき状況でテクストを形成するのかにより、テクストは違った読まれ方をされえることを意味する。
また、言語使用者は、彼/彼女たちが生きている組織的かつ言語的検量の諸条件を意識化し、暴き立て、その諸条件に異議申し立てをする必要がある。
授業研究に応用させると、研究者が問題を抱えている当事者との対話を記録し、物語へと成長させる必要がある。物語としたのは、これがあらゆる可能性から解釈され、公的に示される概念だからである。
また、研究者と当事者(授業者)の対話のそれぞれの土台となる社会的なコンテクストを十分に考慮する必要がある。
結論
「研究者の透明性も必要となってくる」
研究者はよい聴き手であるとともに、研究を物語に成長させる良い書き手であることが重要である。また、研究者が自身の「正体」を開示することも必要になってくる。
今後の課題として、どのような読者を想定すれば、「当事者研究」をヒントにしながら、上下関係や支配関係を克服できるか、また、どこまで研究者が自身のことを開示するかということが挙げられる。
- 和泉敏之 による執筆
- 1986年香川県出身で2009年広島大学教育学部・英語文化系コース卒業をされた和泉敏之さん。2021年には東京大学MOOC・Interactive Teaching修了し、現在は東京大学を軸に研究しながら、作家として活動されています。主な著作に『短編小説 雪の少女』(日本橋出版)などがあります。
https://jacker1223.hatenadiary.jp/
参考文献
熊谷晋一郎 編(2017)『みんなの当事者研究』金剛出版
ヤコブ・L・メイ 著、小山亘 訳(2005)『批判的社会語用論入門』
Sperber. D. 1996. Explaining Culture, Blackwell.
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